インターネット上では誰もが情報を発信できる時代だからこそ、根拠のない虚偽の書き込みによって企業が名誉や信用を傷つけられるリスクも増えています。たとえ事実無根であっても、それが検索上位に表示され続けることで、顧客や取引先の信頼を失ってしまうケースもあります。本記事では、虚偽の書き込みに対して企業が泣き寝入りしないために、どのような対処と予防が必要なのかを詳しく解説します。
虚偽の書き込みが企業にもたらす深刻な影響とは
現代のインターネット社会において、企業に関する虚偽の情報が拡散されるリスクは決して珍しいものではありません。事実無根のレビューや、誤解に基づく悪意ある口コミ、根拠のない噂話など、いわゆる「虚偽の書き込み」は、企業の評判を瞬く間に損なう力を持っています。特に、検索エンジンの上位にこうした内容が表示されると、その情報が事実かどうかにかかわらず、多くの人が「そういう会社なのだ」と信じてしまう可能性があります。
たとえば、「この会社は支払いをしない」「対応が最悪だった」「社員の態度が悪い」などといった書き込みがSNSや口コミサイトに投稿された場合、それが正当な批判ではなく、何らかの誤解や意図的な虚偽であったとしても、検索で上位に表示されれば企業の信用に大きな傷がつきます。しかも、検索エンジンは“クリックされやすい”“議論が盛り上がっている”コンテンツを上位表示させやすいため、ネガティブで扇情的な投稿ほど目立ちやすくなるのです。
結果として、顧客離れや売上減少、採用への悪影響、取引の中止といった実害が生じるケースも多く、企業にとっては極めて深刻な問題です。虚偽の書き込みに対して何も対応しなければ、それが“事実”として一人歩きし、信用低下が長期的なダメージとなって残ってしまうのです。
まずは冷静に事実確認と証拠収集を徹底する
虚偽の書き込みに直面した場合、企業がまずやるべきことは、感情的に反応するのではなく、冷静に事実確認と証拠の保存を行うことです。相手の投稿内容が虚偽であると主張するためには、「何が事実で」「どのように異なるか」を第三者にも明確に示せるようにする必要があります。
まず、該当する書き込みの全文を確認し、スクリーンショットなどで保存しておきましょう。SNSであれば投稿日時やアカウント名、IP掲示板であればスレッドタイトルや投稿番号なども記録に残すべきです。URLも控えておくことで、後の対応時にスムーズにやり取りができます。
次に、社内で該当の件に関する事実関係を確認します。たとえば、実際にそのような顧客対応があったのか、取引上のトラブルが発生したのか、内部の従業員が関与していないかなどを調査し、事実との相違点を明確にしましょう。
また、同様の書き込みが複数の媒体に渡って広がっていないかを調査することも重要です。1件の投稿がきっかけで、まとめサイトや匿名掲示板、SNSで内容がコピーされている場合、対処の範囲が広がることになるため、早い段階で全体像を把握することが求められます。
このように、まずは企業としての“足元を固める”ことが、次のステップとなる削除依頼や法的対応を行う上でも極めて重要な土台となります。
削除依頼や法的対応を検討する際の基本手順
虚偽の書き込みに対して企業が取れる具体的な対策のひとつが、削除依頼の提出です。多くのSNSや口コミサイト、掲示板などでは、投稿の削除申請を受け付けており、内容が名誉毀損やプライバシーの侵害、事実無根であると判断されれば、運営側の裁量で投稿を削除してもらえる可能性があります。
削除申請を行う際には、次のような情報を整理して提出する必要があります。
- 問題となる投稿のURLやスクリーンショット
- 投稿内容のどの部分が虚偽であるのか、事実とどう異なるのか
- 投稿によって企業が被った具体的な損害や影響
- 削除を求める理由(名誉毀損、業務妨害など)
これらを丁寧にまとめ、サイト運営者の指定するフォームから申請することで、対応が行われることがあります。ただし、削除依頼に応じてもらえないケースも少なくないため、次の手として法的措置を検討することになります。
具体的には、投稿者のIPアドレスの開示請求(プロバイダ責任制限法に基づく)や、損害賠償請求、名誉毀損による民事訴訟などが挙げられます。こうした対応を行う場合は、弁護士などの専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが不可欠です。
また、状況によっては、検索結果からの除外申請(Googleなどへのリクエスト)も一つの選択肢となります。投稿自体を削除できなくても、検索でヒットしにくくすることで被害の拡大を抑えることが可能です。
虚偽の書き込みへの対応は時間と労力を要しますが、適切な手順を踏めば削除や名誉回復の道が開かれることも多いため、早期の対応が重要です。
再発防止のために企業が整えるべき情報管理体制
虚偽の書き込みが発生したときの対応だけでなく、将来的な被害を防ぐための体制づくりも企業には求められます。特にネット上の風評被害は、突発的に起こるケースが多く、平時からの備えがそのまま被害の大きさを左右します。
まず重要なのは、定期的な「自社名の検索チェック」です。GoogleやSNS、掲示板などで「会社名+評判」「会社名+口コミ」などのキーワードを使い、どのような情報が出てくるかをモニタリングする仕組みを構築しましょう。異変を早期に察知できれば、拡散が広がる前に対処できる可能性が高まります。
また、ネット上での対応ルールやマニュアルを事前に整備しておくことも有効です。虚偽の投稿を見つけたとき、どの部署が対応するのか、誰が一次判断を行うのか、削除申請はどこへ連絡するのかなどを明確にしておくことで、いざというときに慌てずに対応できます。
さらに、信頼性の高い情報発信を継続的に行うことも、長期的な風評対策になります。ブログ、プレスリリース、SNSなどを通じて企業の透明性や活動内容を積極的に公開することで、虚偽の情報に対しても「そんなはずがない」と思われる土壌を育てておくことができます。
加えて、顧客との信頼関係を築くこともリスクヘッジの一環です。万が一悪評が出回った場合でも、普段から信頼を得ていれば、既存顧客は企業側の説明を信じ、拡散に加担する可能性は低くなります。
このように、虚偽の書き込みに対抗するためには、事後対応と同じくらい、事前の情報管理体制の強化がカギとなるのです。
まとめ
虚偽の書き込みは、企業の信用を大きく損ねる危険を持ちつつも、誰にでも起こり得る現代的なリスクです。しかし、泣き寝入りする必要はありません。正確な事実確認と証拠の収集、適切な削除申請や法的対応、そして平時からの情報管理体制の整備を行うことで、被害を最小限に抑えることが可能です。企業が自らの信用を守るためには、“見られている”という前提での行動と、冷静かつ迅速な対応が不可欠です。